Art relics

音と記憶を編むアーティスト・紺野美咲さんの「やわらかい過去たち」

音が記憶を呼び戻すとき

「目を閉じると浮かんでくるのは、言葉じゃなくて音なんです。」

そう語るのは、東京を拠点に活動する映像・サウンドアーティスト・紺野 美咲(こんの・みさき)さん
かつて織物を学んでいたバックグラウンドを持つ彼女は、“音と映像を編む”という独自の手法で、失われかけた記憶や感情を作品として紡ぎ出します。


音で“触れる”インスタレーション

代表作《やわらかい過去たち》は、録音された生活音・衣擦れ・針の音などを組み合わせたサウンドレイヤーと、映像による空間表現で構成されたインスタレーション。
画面には手作業で布を縫い合わせる過程が映し出され、そこに重なるように「縫う音」「呼吸」「窓から入る風の音」などが静かに響きます。

「この作品は“視る”というより、“思い出す”ためのインスタレーションなんです」

観る者自身の記憶や感情が重なり、作品の一部となっていくような体験が特徴です。


見えないものを“残す”ためのアーカイブ

「音も映像も消えていく。でも、その消えていくはずのものにこそ、記憶は宿ると思うんです」

ARTRELICに参加したことで、紺野さんは「記録すること自体が作品になる」という新しい視点を得たといいます。
作品そのものだけでなく、音の収録場所、使用したマイク、素材の由来なども含め、記録と保存の精度を高める試みを続けています。


紺野さんの活動をもっと知るには?


まとめ:静かに、深く響く記憶のアーカイブ

紺野さんの作品は、音や映像という“形にならない素材”を使いながらも、驚くほど強く、感情に残ります。
彼女が紡ぐのは、消えていくはずの記憶をやさしく包み込む「やわらかいアーカイブ」。
音を媒介にして人と過去をつなぐ、繊細で力強い表現のかたちです。

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